目黒区の5歳女児の虐待死事件について

介祉塾の砂です。

 

最近、とても悲しい事件がありました。

 

5歳の子供が虐待死した事件です。

https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/06/gyakutai-yua_a_23452097/

 

 

今回は私のソーシャルワーカーとしての視点から書いてみます。

 

ただし、この事件は相当難しいケースだと思いますし、推測が含まれている点もご了承ください。

 

 

ところで、この事件の批判について、両親や児童相談所だけでなく、行政や政治に向けられたものも多いです。

 

社会的な問題である以上、批判の矛先もそこに行きつくからなのでしょう。

 

 

批判の内容としては、

 

①児童相談所の対応できる職員数が少なくて(※100件に1職員と言われている)、十分なマンパワーが確保されていないから

 

※本当に100件に1職員が不十分なのかは、職務内容やカウントの仕方を検証したうえで、判断すべきだと思いますが…

 

②警察との連携体制がないから

 

③親権停止制度が活用されていないから

 

④施設や里親、養親が足りていないから

 

 

だから、予算を増やすことや制度を改めるべきであり、それをしない行政や政治は怠慢であると批判するわけです。

 

行政や政治の責任に転嫁するのは分かりやすいですし、オピニオン・リーダーやメディアとしても人々の感情を煽りやすいので、気分としては分かります。

 

しかし、仮に予算を増やして職員数や施設を増やそうが、「私たちは50件も担当しているのに」、「施設は全然足りていない」と言うのが関の山のような気がします。

 

 

私は、これらの批判はあまり現場を知らない人が、自分たちが分かりやすいように問題をすり替えているだけなのだと思いました。

 

 

私のソーシャルワーカーとしての視点から書いてみます。

 

先ず、社会福祉というのは、負担者と受益者が分かれているので、限られた予算の中でやり繰りをすることが前提です。

 

したがって、改善策を考えるのであれば、なるべく今あるものの中で考えなければなりませんし、でないとこのケースから何も反省がないことにもなります。

 

 

A. 香川県の児童相談所の対応について

 

✓ 私は、このケースは子供の保護だけではなく、義父と母親、子供と別々のケースとして扱うべきだと思いました。

 

貧困の連鎖は親から子供だけでなく、その前から続いているからと考えるべきで、子供とは別に義父の抱えている課題にも対応する必要があるからです。

 

また、ソーシャルワーカーは法律家ではないので、正義を判断する職業ではありません。

 

したがって、子供の保護とは別に義父を一人の人間として公平に扱うべきであり、その意味で香川県の対応が適切であったのか検証が必要なのだと思います。

 

 

✓ 香川県の児童相談所は、家裁の審判(児童福祉法28条1項)で長期分離が認められる条件を満たさないだろうと判断したとのことでした。

 

この点について、弁護士や医師の先生などの専門家に十分に関与してもらったうえで判断したのでしょうか。

 

少し話が逸れます。

 

私の体験なのですが、某相談支援センターにある利用者の権利擁護について相談したことがありました。

 

そのときの担当者は法律上の権利についてほぼ分かっていなかったにも関わらず、連携しているリーガルサポートや法テラスなどの機関に(電話で10分程度で確認できるような)相談もせずに判断していました。

 

そのことを担当者に軽く問いただすと、平然と「私は不勉強なので知りませんから」と言い返してきました。

 

私は唖然とし、相談したことにものすごく徒労を感じました。

 

今回のケースの詳細は分かりませんが(私の体験も関係ありませんし)、児童相談所が適切な判断手続を取っていたのか検証が必要なのだと思います。

 

 

✓ 香川県から品川区の児童相談所に引き継ぐに当たって、電話での依頼と数100ページの2016年8月からの全記録を送付したとのことです。

 

しかし、電話で依頼するより、直にクライアントと香川県の担当者、品川区の担当者が会って引継ぎをしないと新しい担当者とは信頼関係が築けないと思います。

 

香川県の担当者が東京へ出張できない理由があるのでしょうか。

 

数100ページの記録を書く時間より、クライアントと向き合う時間の方がずっと大事です。

 

この点についても、私は香川県の引継ぎが適切であったのか検証が必要なのだと思います。

 

なお、今後香川県は第三者委員会を設け事件について検証する予定です。

 

 

B. 品川区の児童相談所の対応について

 

ニュースでたくさん報道されているので、私としても書くこともないです。

 

※東京都のその後の対応策について

https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/08/gyakutai-koikeyuriko-kaiken_a_23454089/

 

 

以上、長文でしたが、福祉に携わる一人としてとても心の痛む事件でした。

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