介護事業者の大規模化について
介祉塾の砂です。
今後の介護給付費の適正化について、介護事業者の統廃合により企業規模を大きくすることで経営の合理化(≒費用の削減)を図り、介護事業者の収支差率を改善させ、これにより介護報酬を引き下げようとする動きがあります。
経営の合理化とはスケールメリットのことを指しており、簡単に言うと企業規模が大きくなれば固定費が売上高に占める割合も下がるので、その分収益力が高まると言うことです。
例えば、訪問介護事業所について利用者数が100人であったとしても、10人であったとしても、管理者は1名必要となるので、どちらの場合であっても管理者の人件費が掛かります。
しかし、利用者数100人の場合の方が、10人の場合に比べて負担感が少ないです。
また、求人広告を利用する場合でも10人募集するのと1人募集する場合でも、広告料にそれほど差はないので、企業規模が大きければそれだけ有利になります。
このようにスケールメリットとは、企業規模が大きくなることで費用が削減される効果をいいます。
私はスケールメリットによる効果については異論はないのですが、財務省や経団連の主張にはものすごく違和感があります。
※ 財政制度分科会「社会保障について(平成30年4月11日)」
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彼らは「企業規模が大きいほど経営の効率化が図られているので、経営主体の統廃合をすべきだ」と主張しています。
論拠としては
① 小規模事業者の収支差率が低い。
↓ なぜ小規模事業者の収支差率が低いのか?
② スケールメリットが働いていないからである。
↓ なぜスケールメリットが働かないのか?
③ 企業規模が小さいからである。
↓ なぜ企業規模が小さいのか?
④ 収支差率が低いため、企業規模が大きくならないからである
↓ したがって
⑤ 経営主体の統廃合により企業規模を大きくすべきである。
一種の循環論法で、非論理的です。
ところで、私は小規模な介護事業者が多い理由については、法規制にあると考えています。
例えば、同一建物減算があります。
(今は要件が変わりましたが)訪問介護の減算を回避するために、以前は定員を29名にしていた有料老人ホームがありました。
最近増えている地域密着型介護老人福祉施設(小規模特養)も同じです。
定員が29名なのに、通常の特養と同様に専門職の配置が義務付けられています(兼務可であるなど基準は緩和されていますが)。
今回の改正では、通常規模・大規模デイサービスの介護報酬の減額がありました。
その他にも、ユニットケアの個室化などがあります。
このように、企業規模が大きくなることを阻害する要因がたくさんあります。
このことからも、経営主体の統廃合よりも規制緩和をするほうが効果的だと考えられます。
この議論は、介護報酬引下げの意図があるために、政策的に一貫性がない主張になるのでしょう。