社会福祉法人と内部留保

介祉塾の砂です。

 

政府やメディアでは、介護福祉が儲かっている論拠として、「社会福祉法人などが運営する特別養護老人ホームの内部留保が1施設当たり平均3億円、全体で2兆円を超えている」とされる点が問題視されています。

 

 

とても分かりやすい論拠なのですが、多少なりとも考察が必要です。

 

その前に、この論拠に対して、介護事業者団体や介護福祉の専門家から的外れな反論が出されることがあります。

 

「社会福祉法人の内部留保は現金で溜め込んでいるのではなく、土地建物などの固定資産によるもの」だとして、簡単に吐き出せるものではないという反論です。

 

これは初歩的な簿記・会計の知識がないことによる誤解で、現預金がなければ新たに借入して支出し、赤字決算をすればよいだけです。

 

 

では、どのような点について考察が必要なのでしょうか?

 

① 内部留保については、法人単位でみるべきであって、施設ごと見るべきではない。

 

財務の健全性は部門ではなく、法人で見るべきだからです。

 

② 収入額を考慮していない。

 

経営を安定するには、一般的に月商の3倍程度の内部留保が必要だとされています。

 

事業規模次第では、内部留保が平均3億円であっても多くはありません。

 

③ 介護事業は本質的にあまり儲からないビジネスモデルである。

 

社会福祉法人に多額の補助金(整備費の1/2)が投入されるのは、建築費や設備費など初期投資額が各種規制によって多額となることやそのわりに利益率が低いからです。

 

社会福祉法人は、土地・建物は原則として自己所有となるので総資産は過大であり、収入の2、3倍以上となることが多く、投資効率は低いです。

 

中には、総資産20億円、収入5億円・収支差額1千万円という社会福祉法人もあります。

 

このような財務状態でも経営できるのは、非課税法人であること、借入条件が優遇されていること、多額な補助金があることなど有利な条件があるからです。

 

④ 社会福祉法人には持分権がない。

 

そのため、営利法人と異なり、配当による社外流出がないです。

 

また、役員報酬にも規制があり、実体のない支出については行政による指導監査の対象となります。

 

たがって、内部留保は社外流出することなく積み重なったものになります。

 

 

このように、社会福祉法人の内部留保に関する問題については、違った側面からの考察が必要です。

 

そのうえで、内部留保の活用について検討しなければならないと言えます。

 

 

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