介護の技能実習制度で人手不足が解決する?
介祉塾の砂です。
今回は介護の技能実習制度の今後の見通しについて書いてみたいと思います。
結論から言うと、人手不足は埋まらないと思います。
なぜなら新興国の出稼ぎには、国家経済的な役割が期待されているからです。
技能実習制度は日本が優れた技術・知識を新興国の若い人たちを労働力として受け入れて教えてあげることを目的としているとか、たまにそのような勘違いをしている人がいますが、決してそのような話ではありません。
日本に来る技能実習生は、大半がフィリピンやベトナムなどの東南アジアの新興国からです。
よく言われることとして国内人口が1億人を超えると純輸入国(輸入超過)になることで、自国生産物では国民を養うことができなくなり、食料やエネルギーなどを輸入に頼ることになります。
2022年のフィリピンの総人口は1億1,165万人、ベトナムは9,818万人です。
輸入に頼るということは、新興国は海外からの輸入をドル決済で行うこととなり、新興国では多くの外貨準備が必要となります。
さらに国が発展するのでインフラ投資が必要となるのですが、新興国は資本が少ないため自国通貨建てでは十分に借入ができません。
そこで海外からドル建てで借入を行い、ドル建てで返済を行います。
つまり多くの外貨準備が必要となります。
ところが最近は歴史的なドル高です。
これは決して日本円だけの話ではなく、世界中の国々の通貨に対してでも同様です。
そのため新興国では、ますます外貨準備が必要になります。
そこで新興国は外貨をどう用立てするのか、という課題に直面します。
その解決策として、技能実習制度(≒出稼ぎ)が利用されるのです。
海外で働くことで外貨を獲得し自国の親族などに送金してもらうことで、新興国の外貨準備高を増やすということです。
実は出稼ぎが通貨に及ぼす影響は、とても大きいのです。
自国は産業が未発達で十分な就労の機会もなく、若年層にとっては国内不満ともなるので、自国に居ない方が好都合という理由もあります。
しかも自国にない技能を習得してもらうこともできます。
つまり技能実習制度は送り出し先の新興国にとって、一石二鳥以上の効果が期待できるということです。
ところが今はものすごい円安で、日本の賃金はインフレにも関わらずほとんど上がっていません。
つまり新興国の人だけでなく新興国の政府にとっても、日本で技能実習生として働くメリットが少ないという状況です。
近年はシンガポールだけでなく、中東が目覚ましく発展しており、より有利な条件の国を選択する状況となっています。
したがって技能実習生が日本を選ぶことが減少し、介護の人手不足を補うのは難しいと言えます。
他にも最近のトレンドとしてESGの視点があります。
ESGとはEnvironment(環境), Social(社会), Governance(企業統治)の略で、企業経営の指針となるものです。
ここでは詳しくは説明しませんが、簡単に言うと企業は長期的な成長するためにこの3要素を重視しなければならないということです。
そのなかのSocialには、働く人の労働条件や雇用環境を良くするということも含まれます。
翻って技能実習生は、マスメディアなどでは現代の奴隷制度とまで酷評されています。
つまりESG というトレンドからズレており、介護業界が技能実習生に多くを期待することは、むしろ介護業界全体にとって好ましくないとも言えます。
最近は様々な圧力団体から、技能実習生の人員配置基準の緩和が陳情されており、良くない現象だと思います。
では介護業界はどのように人手不足を補うのでしょうか?
私自身は介護の生産性向上が鍵となると考えています。
Buzzwordですね(^^;
少し長文になったので、この点については機会があればどこかで触れようと思います。
1週間に1記事を目標に更新したいですね!
今後ともよろしくお願いいたします。